子供の頃はぶきっちょで体も弱かったので、青年になっても私は神経が落ち着かず、とうてい勇気を持てる自信などなかった。私は肉体面だけでなく、精神面でも負けじ魂の面でも、徹底的に鍛え直す必要があったのだ。……少年時代の私は、マリアッドの小説次の一節を繰り返し読んだものだ。小説の主人公に向かって、英国の一小戦艦の艦長が、肝っ玉のすわった人間になるにはどうすればよいか、教えているくだりである。
「初めて戦場に出るのは、誰でも恐ろしいものだが、取るべき道はただ一つ、戦闘など全然こわくないといった顔で立ち向かうことだ。この態度を常にとり続けていると、見せかけでなく、本当に度胸がすわってくる。恐怖を知らぬ態度を繰り返しているうちに、いつの間にか本当に恐怖を感じなくなり、度胸のある人間になるのだ」
私はこの考えにしたがって、恐怖を克服した。かつては灰色熊から「意地悪な」馬、ガン・ファイターに至るまで、ありとあらゆるものがこわかった。しかしこわくないようなふりをしていると、いつか本当にこわくなくなってきた。その気になりさえすれば、たいていの者は私と同じ経験をすることができる。
「閉じた口には蝿は飛び込まない」――このフィリピンの諺にはいつも感心させられる。