恐れおののいている間はまだ災いは本格的でない。勇敢に立ち向かうべき時は、いよいよ手の下しようがなくなった時だ。
危険が身に迫った時、逃げ出すようでは駄目だ。かえって危険が二倍になる。しかし決然として立ち向かえば、危険は半分に減る。何事に出合っても決して逃げ出すな。決して!
ほんの少しばかり勇気に欠けていたために、多くの才能ある人々が一生功を成すことなく終わっている。思いきって着手する勇気がなかったために一生無名に終わった、大勢の人間が毎日墓場へ送られる。こうした人々も実行に取りかかる決断さえついていれば、おそらく名声をあげていただろう。もし人に認められるようなことを行いたければ、寒さや危険を恐れて、ぼんやりと立ちすくんでいては駄目だ。思いきって飛び込んで全力を尽くして泳ぎ渡れ!これが冷厳な現実である。たえず危険を見積もって、小手先の調整ばかりしていては駄目だ。万事おおらかだったノアの大洪水以前なら、百五十年後の事業のことで友人に相談し、その成果を見届けるまで長生きすることができたろう。だがこの忙しい現代では、仕事の着手を手控えて思い迷い、あれやこれやと人と相談ばかりしていれば、いつの間にか六十歳を迎え、せっかくの兄弟や親類や友人の助言に従おうとしても、もはやその時間はなくなってしまう。
勇者の気持ちを味わいたければ、ありったけの気力をふるって、勇者らしく振舞うことだ。その時、恐ろしくていたたまれない気持は、勇気りんりんとしてじっとしていられない気持に取って代わられるだろう。
勇むところがなければ、槍は突かれぬものだ。律儀・正直ばかりを気にしていては、心が落ちぶれて、男の仕事はできぬ。時には大ボラでも吹き散らして、見栄を張るぐらいの根性が武士には大切である。
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